大阪府立養護学校でまたもや体罰事件が発生している。大阪府教育委員会は教師の暴力的な体罰行動について何を指導し、何を支えているのか。むしろ体罰を助長するような事件が多発している。
昨年7月に行われた対大阪府交渉で社会福祉法人大阪障害者団体連合会は、和泉養護学校の牛乳瓶殴打事件、茨木養護学校の馬乗りになって顔を床に押し付けた事件を取り上げて問題の追求を行った。それなのに数ヵ月後の10月26日(金曜日午後3時15分頃)に、府立養護学校で高等部1学年の女生徒が女性教師によって床に押し倒され、馬乗りになった教師によって生徒の右上腕を押さえつけ、右手で生徒の首を押さえつけた。そのときの指跡が生徒の首にはっきり残り、携帯電話で写真を保護者が撮り、10月29日(月曜)に出向き写真を示して学校側に説明を求めたところ、学校側は「学年主任が両肩を抑えた。」と説明したが保護者の納得が得られなかった。保護者は、子供が先に先生を叩いたからと泣き寝入りにされ、事件発生後2ヶ月を経た12月末に「障害者110番」の電話で、1府民から「これは体罰ではないのか。」という申し出があり、本会では、早速、大阪府教育委員会に真相を究明するように申し出をした。しかし、大阪府教育委員会障害教育課では、「養護学校で調査中」ということで1ヶ月近くなるが真相が明確にされない。何があったにしても、生徒を床に押し倒し馬乗りになって首を押し付けたということだけで体罰である。しかも、教師は学級主任の教師が引き離そうとしてもなかなか離れないので体当たりをして押し倒して離したというのである。この女性教師は、そのとき何をしているのか一瞬分からない精神状態にあったというのである。もしも止めてくれる人がいなかったら事態は深刻な事件へと発展していたかも分からないのである。
大阪府教育委員会は、体罰防止マニュアルを改正して昨年10月に、府内盲聾・養護学校に配布した直後に起こった事件で、このマニュアルで学校ごとに全職員に体罰防止の研修を行う計画であった。しかし、研修結果に成果があったのかは甚だ疑問である。必要な部分をコピーし、全職員に配付した学校長もあるといわれている。学校の管理職自体も、大阪府教育委員会事務局も体罰に対する認識の乏しさが伺えるのである。
柏原市にある障害者福祉施設高井田苑で入所している障害者を動物に例えたり、障害者の尊厳を無視するような言動を職員が公然とするなど、人権侵害を行っていると新聞で報道されている。大阪府の障害保健福祉室は人権問題についてどのような意識と指導をしているのだろうか。障害者福祉施設といえば単に生活を保障する施設に過ぎないと考えているのではないだろうか、障害者が人間らしく普通に生きる権利を守ることを誰がしなければならないのか。認識を持っているのかと慨嘆しないわけにはいかないのである。昨年、視覚障害者の入院患者を公園に放り出して帰っていった病院のこともある。大阪府の健康福祉部はこの問題にどのような責任を取ろうとしているのか。
障害者の人権無視が養護学校や障害者福祉施設で連続して絶え間なく起こってくる大阪府の現状は表面に出ているものもあればひた隠しに隠されているものも数多くある。この事実を前にして行政はその責任を感じているのだろうか。
障害者の人権問題は、障害者福祉の基本であり、教育や福祉施設で担当する職員がこれを無視して人間的尊厳を剥奪するような行為があること自体障害者福祉を担うことが不適格な人たちというレッテルを貼ってもよいのではないだろうか。ましてやこれを管理する大阪府健康福祉部・大阪府教育委員会の責任は重大である。大阪府の人権室は何をしているのか一向に分からない。府民の中で弱者といわれている障害者が、養護学校や福祉施設で人間的な扱いも受けていない正に人権侵害を受けているのにもかかわらず何の行動も起こそうとしない態度は府民として絶対に許されない姿勢である。特定の団体の人権を守る存在ならそれを堂々と標榜すべきである。姿勢は、批判されても仕方がない。
社会福祉法人 大阪障害者団体連合会 理事長 樋口 四郎
